●私たちが今言及しなければならないのは「報道の自由」と「市民の表現の自由」との相関関係を明らかに認識しなおすことが肝要ではないかと考えます。

 安倍政権が目論む「憲法9条」への介入を阻止し、特定秘密保護法―集団的自衛権行使容認―安全保障法制へと続いてきた安倍晋三の明確な意図に敢然と立ち向かっていく為には、「報道の自由」を確保することが大前提となり、報道の自由と市民の表現の自由が相俟って、初めて力強い国民の意志の拡大が可能となると再認識する必要があるように思います。

 時の政権の自由裁量によって「報道の自由が制限され得る」等という、思い上がった、民主主義を根底から破壊するような、今の安倍政権の市民を愚弄するが如き仕儀を黙して看過することなど断じて出来ないと言わざるを得ません。

 

「世界の報道の自由度」(世界のジャーナリストが集まって評価を下す組織=本部はパリ)からみる国家の評価。

 

 日本は2010年には11位にランクされていましたが(全180カ国中)、2012年に安倍政権になって以来22位―53位―61位となり2016年度はついに72位にまでその評価を下げられてしまいました。ロシアは今年度評価148位、トルコは151位、そして中国176位、シリア177位、北朝鮮は179位、最下位はエリトリア(アフリカ)です。最上位はフィンランド、2位オランダ、3位ノルウェー、4位デンマークと続きます。ドイツは16位、アメリカ合衆国41位、フランス45位、と評価されています。

 

 この自由度評価から私たちが見て取れるのは、やはり国家の政治の独善性の有無が明確に見て取れ、その国の国家としての国際的価値が判別できる一つの指針になっているということではないでしょうか。特にロシア、中国、シリア、北朝鮮という「世界に背を向けて、自国の利益追求のみを推し進める、所謂エゴイスト国家群」は世界の平和共存と核なき世界を目指す他の理性的国家に敢然と挑戦しつづける国家とまさにダブっています。

 近代国家として再生したと思われているロシアと中国は、まさに独裁体制を堅持する後進国だとする見方も出来るでしょう。ロシアに見るプーチン大統領の独裁体制はすでに16年になります。(メドベージェフを代役として4年間務めさせましたが)後4年は継続されることは確実ですから、20年間の長きに亘ってロシアを支配し続けることになります。今回のドーピング問題でも判るように、プーチンの統治常識には「証拠さえ残さなければ目的の為には何をしてもいい」という独善が常に内包されています。

 

<ロシア>マレーシア航空機撃墜、クリミア併合、ウクライナ東部侵攻、そしてアサド政権に加担するシリア空爆の継続、等々、正に国際社会をあざ笑うが如き武力侵攻を平然とやってのけるプーチンの行動は、ロシアの情報統制が如何に意のままに機能しているかの現れだと推察できます。それだけではなく、ロンドンで起きた、ロシア元情報将校アレクサンドル・リトビネンコ氏の毒殺事件(高放射能を含むポロニウム)においては、イギリスの内務省の公開調査委員会は「2006年にロンドンで起きたロシアの元情報将校アレクサンドル・リトビネンコ氏の毒殺事件について、ロシアのプーチン大統領が殺害を承認していたとする調査結果を発表した。」(BBCと報道されています。 

 

 ゴルバチョフ氏はグラスノスチによって、体制の硬直化が原因と見られる種々の社会問題を解決するために、言論・思想・集会・出版・報道などの自由化・民主化を遂行し、党の統制下に置かれない市民団体の結成なども可能となりました。又スターリンの大粛清時代における犠牲者の名誉回復など、厳禁されたテーマの再考もこの時期から始まっています。

                

★人類の向かうべき方向から逸脱し、ロシアを後退させてしまったプーチン

現在のロシアTVを観ていると、「マレーシア機撃墜はウクライナ軍の仕業」「クリミア併合はクリミア市民によるもの」「シリアでの数々の市民の殺傷と病院をターゲットとした攻撃はアル・ヌスラ戦線やクルド人部隊―PKK-によるもの」等々、シリア市民軍のれっきとした監視による報告があるにも拘わらず、平然と公共放送で虚偽の報道をし続けています。そしてプーチンが指示を出したとされるリトビネンコ暗殺については、ロシア国内では一切報道されませんでした。

 

★国家による情報統制を平然とやり抜ける国々は、正確に「国境なき記者団」によって看破されています。「報道の自由度」が国家の民主主義度を評価する上で、優れた基準となっていることは確かであり、その度合いの急激な変化―現在の安倍政権の現状―は、すなわち日本という国の自由度の度合いが下落し、民主主義国に値しない危険ゾーンに入っていると言えます。このようなことは一向に意に介していないが如く見える安倍晋三によって、日本人の国際的な評価までも下げられてしまっていると言える所以がここにあります。中国や北朝鮮の恣意行動に右往左往している様は見苦しい限りで、日本人が伝統として受け継いできた、毅然とした「武士(もののふ)の心」は現在の政治家たちには髪の毛の一筋すら見えません。

 

●報道する側の責任

 報道をする側にとっては「政治的中立性」などという言葉はナンセンスなことであり、このような概念すら存在しえない言葉と言えるでしょう。もしこの言葉が有効であるとするならば、自民党政権の代弁者となり果てている読売系列やサンケイグループにこそ当て嵌め得る言葉と言えるのではないでしょうか。

 

 ここで私たちが考えておかなければならない問題は、欧米の民主主義先進国においても悩みとなっている「報道機関のコングロマリット企業による買収」が次々と進行し、企業理念によって「報道・言論の自由」が阻害されつつあるという現実です。企業理念が最優先され、売れない新聞は発刊しない・世論を形成するのは愚かな大衆を如何に企業側の思いのままに操るか・といった報道の責任から大きく逸脱した方向へ向かおうとしています。ポケモンGOに世界中の若者が夢中にされている現実は、このような企業理念に振り回される恥じ入るべき姿に、嘆くしかありません。

 

★ルパート・マードック氏の放送業界における買収劇(タイムズやウオールストリートジャーナルを始めとして)は皆さんもよくご存じのことと思いますが、2013年に氏の所有するニューズコーポレーションは持ち株会社を統合し、実働する企業群を分社化する(ニューズコーポレーションと21世紀FOX等)ことによって、その内実が実に解明しにくくなっています。オーストラリア出身のマードック氏の企業構想は、メディア業界に限られたものでは無くなりつつあるようです。

マードック氏に知己を得た孫正義は、1996年に彼と組んでCS衛星放送プラットフォーム「JスカイB」計画を発表。その一環として、旺文社所有の全国朝日放送(現テレビ朝日)の株式を取得し、これを足がかりに日本の地上波テレビ局からのコンテンツ供給を目論みました。しかしこれは大株主である朝日新聞社の反発に遭い売却せざるを得なかったようです。この後、日本のメディア業界への介入は、ジェイ・スカイ・ビーを設立し、翌1997年にはソニー、フジテレビジョンも加わっています。JスカイB1998年にパーフェクTV!を運営する日本デジタル放送サービス(現スカパーJSAT)と合併し、スカイパーフェクTV!(現スカパー!)のスカイサービスとなっています。

 

※新聞社に関しては日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律(昭和26年法律第282号)という特別法が制定されており、株式の譲受人を当該新聞社の事業関係者に限定し、既存の株主が事業関係者でなくなったときは他の事業関係者に譲渡しなければならない義務を課すことが認められている。

 

★マードック氏所有の企業は、オーストラリア証券取引所 (ASX)NASDAQに上場しているほか、「主に英国以外で上場している海外会社(secondary listing)」としてロンドン証券取引所にも上場しています。200411月には隠れタックスヘイブンが密集するデラウェア州(アメリカ)で会社を再設立し、本拠をオーストラリアからアメリカ・ニューヨークに移しています(本部は、ニューヨークの六番街(アベニュー・オブ・アメリカズ)の、ロックフェラー・センター内)。

 このロンドンとデラウェアへの進出とロックフェラー・センターへの移転から、マードック氏のこれからの方向性の転換が進んでいると読みとれるように思えます。

 すなわち、他業種の先端企業や複合企業が密集する地域への進出が、2004年から相次いで実行された真意は、ビルダーバーガーの大先輩であるロックフェラー家やロスチャイルド家(ロンドン)との繋がりをより親密にしようとする意図と捉えることができ、世界支配の一員となるツールとしてのメディア支配が、マードック氏の野望の一里塚となっている証拠ともみてとることが出来ます。

 

・ドナルド・トランプのような品位も知性も欠けた最低の人物が、何故ここまで(共和党の大統領候補)なったのかは、メディア戦略における総力戦が功を奏した典型と言えます。アメリカはネット社会であり、紙による新聞はミニコミ情報誌を除いてはどんどん後退しています。特に中西部の共和党支持基盤地域では、トランプ氏の情報はボランティアによる個別訪問とティーパーティ、福音派の教会、そしてインターネットによる情報だけに限られて来ていています。マードック氏自身、紙の新聞は不要として、タイムズやウオールストリートジャーナルの発行部数は10年前の20%近くにまで減殺しています。その代わり、かつてはネットで無料で読めたタイムズもウオールストリートジャーナルも現在は殆どの記事が有料会員でなければ読めなくなっています。

 紙面配信では多様な意見を常に並行して掲載することが常でしたが、現在のネット配信では、多様性は失われ、記者の名前を末尾に記し、「記事の内容に関しては当社は一切責任を負いません」としながら、一方的な記事を唯一の真実であるかのように掲載されるのが常態となって来ています。

 読者は書かれた記事を鵜呑みにする傾向が強くなり、「殆ど検証しようとはしない」というハーバード大学による調査報告もあります。トランプがこれまで散々搾取してきた低所得層やヒスパニック系の人々が、トランプ支持を狂ったように叫び続ける姿は日本の我々には理解し難いことですが、これが正にメディア戦略のなせる技と言えるのではないでしょうか。

 

★だが、実は日本人も安倍自公民政権によって同じ戦略に嵌ってしまっています。特に経済重視を最優先とする多数の日本人を、自分の俎上に乗せるには、実にたやすい戦術(アベノミクス)を駆使するだけで洗脳することが出来たと言えます。常に安倍晋三が触れようとしなかった日本の財政赤字・・これこそが真っ先に報道されるべき真実であり、国民とともに解決しなければならない最優先課題であるにも関わらず、どの報道機関もプライマリー・イッシュ―として報告しなかったのは何故でしょうか?

 

●日本の財政赤字

 戦後55年間(1945年~2000年)迄、決して400兆円を超えなかった財政赤字が2001年小泉政権以来経済政策のパラダイムそのものを改変し、国債発行(政府債務)による財政規模拡大によって日本の経済活性化を目指す方法へとその方針を転換しました。

 財政発動をし、経済規模を拡大させれば結果は自ずとついてくる(利益の供与は自然と拡大される)という竹中平蔵の甘い論理に乗せられ、同時に国民からの支持は当然の如くに拡大されるだろうという身勝手な考えが底辺にあったことも確かです。結果としては国の借金が増えただけのことでしかありませんでした。

・竹中平蔵(内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)

内閣          1次小泉内閣

1次小泉内閣第1次改造内閣

1次小泉内閣第2次改造内閣

2次小泉内閣

2次小泉改造内閣

3次小泉内閣

在任期間        2001426- 20051031

・その結果、日本の財政赤字は2000年に400兆円だったものが、21世紀に入ったわずか15年で1100兆円にまで拡大されたのです。小泉・安倍と続いた自民党政権(間に民主党政権=鳩山・管・野田―2009年~2012年を挟んで)は、12年間の治世で政府債務を700兆円も増大させました。これらの破綻状態ともいえる国家財政を返済して行くのは実質的には今の若い世代であり、経済的歪みを糺していくことは容易なことではないでしょう。

 詳細はこちらからご覧下さい。安倍政権の終焉PDF

 

 「アベノミクス」の真の意味とは借金によって財政規模を拡大し、財政投融資を受けて成長しようとして群がるハエのような企業群を優遇するだけのものでした。ゼロ金利は倒産寸前の企業を崩壊させず、不良債権や不良投資を生むだけであり、健全な企業を育成する為のものではなくなっています。大手の企業内でも何の効果も生み出さないセクションが平然と存在し続け利益を浪費しています。一方健全な成長を模索し苦悩する中小企業には何の効果ももたらしてはいません。低所得者層への改善はなされず、格差は更に増大し、生活保護費は5%以上カットされ、大企業の内部留保のみが増え続けている、というのが実態です。

上記の文章ほか全文は下記の「報道の自由とは何か}PDF8ページをダウンロードしてご覧下さい。

2016年9月29日現在の「エールを送ろう」のファイルも併せてご覧下さい。


ダウンロード
「岸井成格にエールを送ろう」の賛同者メッセージファイル9月29日現在(6ページ)
岸井成格エールメッセージ9・29.pdf
PDFファイル 382.8 KB

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報道の自由とは何か
2016年8月8日現在の安倍政権の「報道の自由」に対する圧力ーアベノミクスの失敗ーマスコミの現状分析ー世界のマスメディアの動向ー岸井成格講演会の今後の予定等PDF8ページ
NGO Civilian Platform Japan岸井成格 Daily Ne
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